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東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)57号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 (本件審決を取り消すべき事由の有無について)

(一) 原告は、まず、本件審決は、本願発明は、通常の重合温度条件下において、蓚酸を重合、ゲル化阻止剤として用いることが、その必須要件であることを誤認した旨主張するが、この原告の主張は、理由がないものといわざるをえない。すなわち、

前記当事者間に争いのない本願発明の要旨によれば、蓚酸を添加すべき温度条件について格別の限定がなく、また、本願発明の特許公報によると、本願発明の特許公報における発明の詳細なる説明の記載においても、「本発明実施の方法は此の蓚酸塩中絶剤を重合を終止させ度い時即ち生成重合物の物理性が希望の様になつた時に重合反応混合物に添加するものである。……希望の時に確実に重合停止を行なわせるため重合混合物が重合器から出る直後此の中絶剤を添加する事が望ましい。」と記載されていて、蓚酸の添加は重合器(または重合槽)で重合を行ない生成重合物の物理性が希望のようになつたとき、蓚酸の添加が望ましいことが示されているだけで、重合を行なう間の重合温度条件については、なんらの記載がない。また、一方希望の生成重合物ができたときの該重合物の温度条件についても、実施例二には「蓚酸ソーダで中絶を行なつた試料は四〇度(c)のスラリーの最初の温度」と記載され、蓚酸を添加したときの重合体混合物の最初の温度は摂氏四十度であることが具体的に説明してあるだけであり、その他の蓚酸添加時の重合物の温度条件については、なんら記載されていない。

したがつて、重合を開始して生成重合物の物理性が希望のようになるまでの間の重合温度条件はなんら示されていないから、その間、たとえば、通常の重合温度条件(摂氏九十度〜百五十度)のような特別に重合を行なわせやすい条件にこれを保持しなければならないとする理由は認められず、また、その重合の目的、態様に応じて、その温度条件は変りうるものであると解するのが相当である。

したがつて、本願発明においては重合混合物の通常の重合温度条件下においてのみ、蓚酸を添加するものである旨の原告の主張は、失当といわざるをえない。

(二)1 <中略>引用例においては蓚酸がゲルないし重合阻止剤として利用されること、また、過酸化物のような重合触媒の存在の有無にかかわらず、蓚酸は華氏百度または百二十度の温度においては一日か二日間の重合停止力があり、他面、通常の重合温度条件下――その厳密な温度限定は不可能であるが――においては、蓚酸に重合の停止力のないことを認めることができる。

2 しかし、本願発明においては、通常の重合温度条件下において蓚酸を添加することを必須要件と解することができないことは、前説示のとおりであり、したがつて、引用例と本願発明においては、結局、蓚酸が重合阻止力が及ぶ効力の範囲内の温度において、これを使用するという点で、両者の間に格別相違が存するということはできない。

(三) それゆえ、この点に本願発明と引用例との間に本質的相違のあることを前提とする原告の本訴請求は、その他の点について判断をもちいるまでもなく、理由がないものというほかはない。

三 (むすび)

以上説述したとおり、その主張のような違法のあることを理由として、本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないものというほかはないから、これを棄却する。

(三宅正雄 石沢健 奈良次郎)

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